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TOKYO銀座めぐり
イラストレーター(文と貼り絵)
きりたにかほり
第9回 穏やかな街、亀有銀座
11月、葛飾区亀有へ。
駅前の交番をしばらくじっとみつめて過ごしました。
寒さに凍えながら歩き始めたものの、帰る頃にはおなかいっぱい。
幸せな銀座めぐりでした。


雨をはらんだ雲がどんより浮かぶ亀有の街。
冷たい風が吹くなか、駅のホームから街を見下ろすと、
低い建物が多いからか、空が広く感じられました。


改札を出てすぐの柱には、
「こち亀」の両さんによる街案内マップ。
北口を出て目が合ったのは、金色に輝く両さんの像。

そういえば、ここは両さんの街ですね。

駅に戻ってきょろきょろしていたら
待ち合わせていた編集さんが声をかけてくれました。
「ハイ、どうぞ。きなこは好きですか?」
手渡された白いビニール袋の中には
ふかふかのコッペパン!

下調べのときから気になっていた
亀有の吉田パン、黒豆きなこ味でした。

「わあ、ありがとうございます!」

幸せを携え、銀座の方向へ歩き始めました。



駅前南口側の静かなロータリーは、
「こち亀の街」の看板や金色の両さん像に囲まれていて、
元気な絵柄と穏やかな街との独特のハーモニーが生まれていました。

感心している間に商店街の入り口へ。
「ゆうろーど」と書かれた大きな門をくぐります。

広い道幅と思惑と異なるその名前に、
本当にこの道なのか少し不安になりましたが、
改めて地図で確かめると、「ゆうろーど(亀有銀座商店街)」とあります。

この先、水戸街道まで続くのが亀有銀座だそう。
どうやらここで間違いないようです。



しばらく歩いて聞こえてきたのは鳥たちのさえずり。
左を見ると小さい籠の中で、鳥たちがチュンチュンしています。
小鳥屋さんでした。

歌声に耳をうばわれながら、ふりかえると、
向いのお店に、奥まで続くような道を見つけました。

中に入るとお惣菜屋さんにはじまり、
人がぎりぎりすれ違えるほどの細い通りを挟んで
たいやき屋さん、八百屋さんなど4~5軒のお店が。

しかも、食品市場の名の通り、
すべてが新鮮、全部が安くてお買い得!
うずたかく積まれた野菜と天ぷらの輝きに目をうばわれ、
突き当たりの三叉路で青い水飲み場を見て市場を出ました。

市場の活気に刺激されたのか、
取材前、つけ麺を食べたばかりなのに、
伊勢屋さんでみたらしだんごを注文。
「食べ歩きますか?」
編集さんと声をあわせて、「はい、もちろん!」
ずっしりおもたく、もっちりとして、後味のよい甘さです。

片手にだんご、ふくろにきなこ。
わたし、このままおはぎになれる。


ひとつふたつ、幸福という名のだんごをほおばりながら、
伊勢屋さんの脇、仲町通り商店会という通りに入りました。

アーケードのある静かな通りで
八百屋さんの先にメンチカツのお店を発見。
こんがり熱い視線を送りましたが、
だんごはまだふたつ串に刺さっていますので、
まずは、この通りの終わりまで歩きます。

残りのだんごを食べ終わる頃、車道とぶつかり、
道向こうの小さな乾物屋、越後屋さんへ。
小豆を2枡買いました。
使い込まれたじょうごで枡へと注がれる
ルビー色の豆たち。


ああ、わたし今ならぼたもちになれる。


レジの方に行くと、
乾物屋さんだとおもっていたお店は
煮物を中心にお惣菜や漬け物、お豆腐、たまごと、
豊富な品揃えのスペシャルマーケットだったことに気づきました。

あたたかな醤油の香りに
後ろ髪を引かれながらも店をあとにし、
来た道を戻って、
メンチカツ専門店の亀有メンチへ。

編集さんは牛肉メンチ、わたしは梅しそ豚メンチ。

ずっしりボリュームたっぷり、
サクッとして、ジューシー。

熱々をぺろりと平らげ、元来た大きな通りへ。


立派な果物屋さん、少年時代の両さん像などを通り過ぎ、
いつのまにか亀有銀座の終点にたどり着きました。



引き返す道すがら、
まゆげの太いキャラクターが目に入り、
くすり屋さんの前で足を止めました。

両さんみたい。

くすりの田中屋さん、
さきほどは気づかなかったものの、
よく見れば、右側のたばこ窓口に
小さなクマのぬいぐるみがたくさん。
気になります。

かわいい!たのしい!と写真を撮っていると、
お店の人が声をかけてくれました。

「かわいいでしょ、孫がもういらないっていうから並べてみたの」

「中へどうぞ、どこから来たのー?」

お邪魔すると、声をかけてくれたおかあさんは
常連らしきお客さんとおしゃべりの最中。

店内を見渡すと、
棚の上の小さなキャラクターも、両さんと同じ極太まゆげです。
レジカウンター下のガラスケースには、おひなさまやお人形、
小さなおもちゃたちが詰まっていました。

常連の人が去ったあと、

「あ、そうだわ、あれあげる」

奥の方からなにやらちいさい袋をふたつ取り出し、
手渡してくださいました。
なんと両さんのベーゴマ。

喜んでくれる人のところにあったほうがいいから、と、笑うおかあさん。

その気持ちがうれしいです。


おしゃべりのあと、店を出ると
すっかり日が落ちていました。

いつのまにか冬ですね。

今度は、もっとおなかをすかせてやってきます。


〈本年もありがとうございました。新年最初の銀座めぐりは荒川銀座を予定。おたのしみに。〉


※亀有銀座商店街は、JR常磐線「亀有駅」南口から徒歩3分

※きりたにさんのホームページ「たいようのみやこ」
http://taiyonomiyako.com/index.html
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【きりたに・かほり】
1984年秋田県生まれの香川県育ち。熊本県立大学卒業後に上京し、都内制作会社にデザイナーとして勤務。現在は「世界をあたためたい」と絵を描き、関東を中心にイラストの制作や似顔絵屋さんなど行っている。
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