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TOKYO銀座めぐり
イラストレーター(文と貼り絵)
きりたにかほり
第6回 ふたたびの街、向島橘銀座
あっというまの9月。秋の始まりを肌で感じる涼しい夜、
こども夜市でにぎわう向島橘銀座に行きました。




「どっちでしょう?」

京成線曳舟駅で待ち合わせた
編集さんとわたし。

今回目指す銀座は、ここから徒歩5分との情報。

夕暮れ迫る下町を、なんとなくあっちじゃない?
という編集さんの推測に基づき大股で歩き始めました。

大胆な出立にドキドキしたものの、
午後6時、橘キラキラ商店街こと、
向島橘銀座に無事たどりつきました。


この日は商店街のお祭り。
入り口からすでにそわそわ具合が伝わってきます。

はやる気持ちを押さえ、振り返ってカメラを掲げてうれしくなりました。

「ああ、いいですねえ!」

レンズ越し、目に入ったのは日本一高い電波塔。
静かに輝く青色が美しいです。


都会の光を背に、まずは田丸神社へ参拝。
神社を囲む幟には「運がたまる」との文字。

ご縁もご利益も、
いまやお得なポイント制ということでしょうか。


雑念をふりはらい、何ポイント分かの参拝を終え、
新たな銀座を歩き始めると、
商店街マップが出現。

現在地、曳舟たから通りから、
明治通りまで南北に伸びる約500メートルを、
向島橘銀座と呼ぶようです。


早速手に入れた揚げパンを食べながら歩いていると、
なげわコーナーを発見。
段ボール製の手作り感が愛おしく、
看板をたしかめました。

するとそこには「おでん」の文字。

そして、あれ?
かき氷もある。おでんやさんなのに。



どうやらこの祭り、こども夜市として、
商店街の店々が本来の商品にこだわらず、
こども向けの模擬店を催す祭りのようです。
くじびき、ゲーム、紙芝居にバルーンアートと
種類豊富な店の数々、約20店舗。

これはたのしくなりそう!



喜びながら、奥へ進むと、

 ♪ きょうだいぶーねーはぁ~~

と、渋い歌声が響いてきました。
近づけば、マイク片手に男性が熱唱中。

まさかのカラオケ大会、開催中でした。

驚くことに商店街の真ん中、八百屋さんの店先に、
30インチほどのモニターが据え付けられています。

この初めてのシチュエーションに感動をおぼえ、
歌い終わりまでじっくり聴き入って、
ギャラリーの一員としてカラオケ機械の採点結果を待ちました。
なにしろ、
八百屋さんならでは、95点以上で松茸プレゼント。

しかし、結果はざんねん、得点届かずでした。


なんだか、ドラマチックな商店街です。


しばらく歩いてこの日一番の行列にでくわしました。
そこはどうやら焼き肉屋さん。
普段も焼き肉屋さんのようです。

額に白いタオルを巻いた職人が5人。
立ち込める煙に眉をひそめながら、
小さな網を囲んで、トングや箸を使い、
一枚ずつ丁寧に肉をひっくり返しています。
行列にならぶ人数はざっと数えたところ、30人。
職人たちの真剣なまなざしが印象的でした。



さて、たのしそうな模擬店ばかりなものの
なにぶん、こどもたちが主役の夜市。
なかなかわたしの遊べるゲームがみつからず
悶々としていたところ、
明治通りに抜ける手前で、
和菓子屋さんのくじびきにチャレンジできました。

この店のくじは、和菓子やならではの
きな粉をまぶした小さな餡団子。
中に色つきのお菓子が入って入ればあたりで、
その色によって景品が違うようです。

おもちゃのネックレスを狙って、
いざ、100円のチャレンジ。
白いラムネが出れば成功です。

差し出された爪楊枝でゆっくり割ってみると、

「あら、むらさきの羊羹ですね!おめでとうございます」

わたしよりうれしそうな和菓子屋さんに声をかけられ、
黄色いパッケージのお菓子をプレゼントしていただきました。
ネックレスじゃないけど、うれしいな。

「この団子は手作りですか?」

「そうなんですー」

と、にこにこお返事してくださいました。

手間ひま感じる、おいしいくじでした。


さて、いつのまにか明治通りに出ましたが、
名残惜しい祭りの雰囲気をたのしみに
街を折り返してみることにしました。


すると、さきほどは模擬店のなかった八百屋さんで
パターゴルフが行われています。
風情を感じて写真を撮っていると、
店の奥に大きなお面がぶら下がっていることに気づきました。

箱の片付けをしていた女性に話を聞いてみました。

「これはなんですか?」

「七夕まつりでつくるのよ」

毎年7月、七夕祭りとして、何店舗か合同で商店街を彩る装飾をつくり、
コンテストをしているそうで、わたしのみつけたお面たちは
今年の優勝作品だそうです。

「いつもね、あの人の手作りなのよー」

視線の先にはこどもたちのパターをやわらかに見守る男性が。

「来年ね、時間があったら来てみてくださいね」



街を愛する街の人々に胸うたれ、
道幅いっぱいに集うこどもたちの姿に元気をもらって
この日の取材を終えました。


さて、せっかくですからと、
帰り際、明治通り沿いのお店で晩ごはんにアジフライ。
今度はいつ来ようと充実の一夜を振り返りながら街を出ました。


やがてそれから1週間。

わたしはふたたび向島橘銀座の地へ。
忘れ物をひきとりに、
さっそく2度目の機をいただいたのでした。


ご縁のポイントはたまる一方です。



※向島橘銀座商店街(下町人情キラキラ橘商店街)は、京成曳舟駅から徒歩5分、東武曳舟駅から徒歩7分、東武小村井駅から徒歩10分


〈次回は霜降銀座を予定しています、おたのしみに。〉


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【きりたに・かほり】
1984年秋田県生まれの香川県育ち。熊本県立大学卒業後に上京し、都内制作会社にデザイナーとして勤務。現在は「世界をあたためたい」と絵を描き、関東を中心にイラストの制作や似顔絵屋さんなど行っている。
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