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食べるしあわせ
わたしの「旅と食」【公募エッセイ作品】
03:台湾夜市の匂いと笑い声
かもめの本棚10周年を記念して募集した「旅と食」のエッセイ。全国から寄せられた多数の魅力あふれる応募作品の中から、本連載では編集部が選んだ5作品を紹介しています。3作目は、台湾旅行の思い出を綴った作品です。


台湾夜市の匂いと笑い声

辺木優希奈(鹿児島県、16歳)


 その匂いは、強烈で酸っぱく、鼻の奥にまとわりついて離れなかった。思わず一歩引いた私の横で、弟は面白がって笑っている。台湾の夜市で、両親と弟2人の5人で出会った臭豆腐チョウドウフだった。屋台の前には人だかりができ、油の弾ける音と人々の声が夜の空気に溶け込んでいる。その中心にあるのが、あの匂いだった。父にすすめられ、勇気を出して一口かじる。やはり簡単には受け入れられない味で、思わず顔をしかめた。すると弟の笑い声がいっそう大きくなり、母もつられて笑った。

 それでも、なぜかもう一口食べてしまう自分がいた。強烈な匂いも味も、家族の笑い声や夜市のにぎわいと混ざり合い、ただの食べ物ではなく、一つの体験として心に残っていく。美味しかったかと聞かれれば、きっと迷う。でも、あの夜の空気と匂いと家族の笑い声は、今でもはっきりと思い出せる。
 あの匂いごと、私はあの夜を覚えている。

※本記事は一般公募によるエッセイです(現在は受付を終了しています)。
※記載されている内容は筆者の体験や感じたことをもとに綴られています。
※登場する場所やお店の情報・商品・メニューなどは現在と異なる場合があります。
※内容に関するお問い合わせにはお答えできかねますので、あらかじめご了承ください。
※掲載にあたり、表現・表記の調整を目的として一部編集を行っています。


――忘れられない味や匂い、その土地ならではの風景や人との時間。そんな旅と食にまつわる記憶が綴られた作品を引き続き紹介します。次回もどうぞお楽しみに!



◆かめの本棚のWEBマガジンや書籍で活躍する著者たちがつなぐリレーエッセイ
【忘れられない旅と味】はこちら
https://www.tokaiedu.co.jp/kamome/contents.php?i=1748
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【編集部からのお知らせ】
-2026年6月現在-

★新作ブックレット『自由な旅のレシピ』⇒WEBマガジンの好評連載がブックレットに。世界70カ国以上を旅してきたえーじさんが「自由な旅」の仕込み方を指南。ステファニーさんの既刊『南仏ニースの食卓だより12カ月』より「クリスティーヌのキッチン」も特別掲載。

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