私たちが暮らす環境は日々変化しています。ゲリラ豪雨や竜巻なども珍しくない昨今の異常気象も気になるところ。天気とうまく付き合っていくにはどうしたらよいのでしょうか。――近年は異常気象といわれるような天気も増えているので、体への影響がますます心配です。
かつては梅雨といえばしとしと雨が降っている光景を思い浮かべましたが、もしかしたら今の10代、20代の方にとっては洪水が起こったり、ヒョウが降ったりといったものが梅雨のイメージになってきているかもしれませんね。気圧や温度湿度の変化がそれだけ急激に、日替わりでやってくる。それは当然、私たちにとって身体的にも心理的にも大きなストレスになります。
――気象病には地域性もあるのでしょうか。
山が近くにあることで起こる集中豪雨や、東北の日本海側などで見られるフェーン現象による吹き降ろしの風など、地域特有の季節的な天候変化が体に影響することもあると思います。
反対に“避暑地”と呼ばれるような場所もありますよね。そうした場所が好まれるのは気候の変化が少ないことも理由の一つでしょう。ドイツには「クアオルト」という療養地が各地にあり、温泉や清浄な自然環境などを用いた治療が行われています。日本でもかつては結核の療養所を環境の良い高原などに設けていましたし、今でも温泉療養を研究されているグループがあります。そういったことは、私たちの体が天候や地形などの自然環境からいかに影響を受けやすいか、その表れだと思います。
患者さんの話を聞くと、皆さんハワイは好きですね。「ハワイに行ったら痛みが出なくてよかった」という方がすごく多くて、究極は移住してしまう方もいます。
気候だけではなく、職場がビルの高層階にあることで体調を崩したり、毎日の満員電車で頭痛に苦しんだりする人もいます。リモートワークも一般的になりつつあることを考えると、いずれは「体調に悪影響が出るような環境にわざわざ身を置く必要はない」という時代になっていくかもしれませんね。
――「今日はハワイからミーティングに参加」なんて夢が膨らみます。とはいえ簡単には移住できない私たち……。まずは明日を少しでも快適に過ごせるよう、自分でできる気象病対策はありますか? 気圧による体調不良には、耳のマッサージがおすすめです。内耳の気圧センサーが敏感になるのは血行不良が原因なのです。症状が現れる前にマッサージを行い、内耳の血行をよくしておけば、センサーの感受性を下げることができます。同様に、耳のまわりのツボを刺激することも血行促進につながります。
飛行機に乗る前にもこのマッサージをしておくとよいですね。また、新幹線に乗るときには真ん中辺りの車両を選ぶとよいでしょう。新幹線がトンネルに入るとき、先頭車両は気圧がもっとも高く、後尾車両はもっとも低くなるので、気圧の変化が比較的少ない中央付近の車両を選ぶことで気圧の影響を軽減できます。
――ちょっとした工夫でも症状を和らげることができるのですね。
気象病は自律神経と関わりが深いので、日ごろの生活習慣を見直すことも大切です。ストレッチやウオーキングなどの軽い運動をする、食事は1日3食規則正しく取る、など健康的な生活を心がけましょう。自律神経を整えることで、天気に左右されにくい体をつくることができます。
――やはり基本的な体調管理は欠かせない、と肝に銘じます。「そもそも自分が天気痛なのかどうかはっきりわからない」という方も多いと思いますが、アドバイスをいただけますか? まず始めてほしいのは、記録を付けること。前回お話したように気象病の症状は個人差が大きいので、まずは自分の不調と天気の変化の関係を知ることが非常に大切です。簡単な箇条書きでもかまいません。その日の天気、気圧、痛みの場所や強さを記録してみてください。そのほかにも体調について感じたことがあればメモしておくとよいですね。1カ月ほど続けると自分の傾向が見えてくると思います。(つづく)
――自分の体を見直すことが健康への第一歩。毎日の天気をチェックするのと同じように、体調チェックを習慣にすることから始めましょう! 最終回では、私たちと天気のこれからを考えます。(構成:寺崎靖子)