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美しいくらし
ジョージアで出会ったモノとコト モデル・定住旅行家
ERIKO
第5回 ナウシカのモデルとなった民族衣装
 世界各地で現地の家庭に長期滞在する「定住旅行」をするとき、滞在先となる家族の方とは事前にメールなどでやりとりをする場合もありますが、知人からの紹介でその日に初めて会って滞在を始めるというパターンがほとんどです。見知らぬ外国人を家に住まわせる家族は、好奇心旺盛に受け入れてくれる場合もありますが、多少なりとも警戒心をもっている人も少なくありません。これまで世界各地およそ106の家族の家に滞在をさせてもらいましたが、お互いの精神的な距離をぐんと縮めてくれることには共通点があるような気がします。

 まず一つが食事。ほとんどの場合、人間の基本的な食生活は地産地消です。つまり、そこで手に入るものでその人たちのからだや精神がつくられています。現地の人たちと同じものを一緒に食べることは、彼らの精神性やその土地を受け入れることだともいえるわけです。そうすることで、彼らの心に一歩踏み込めるのです。

 そして、もう一つが着るものです。それぞれの国には、その国や民族のアイデンティティを象徴する民族衣装があります。衣装に用いられる素材、色、形などは、彼らが暮らす環境に適応したものであり、精神性や世界観が現れています。さまざまな国を訪れるたびに民族衣装を着させてもらっているのですが、似合う、似合わないにかかわらず、衣装を身につけると現地の人たちは「私たちの仲間になったのね!」というように喜んでくれます。

男性用の民族衣装「チョハ」

 ジョージアで定住旅行した際にも、素敵な民族衣装に出会いました。新刊『ジョージア旅暮らし20景』でも紹介していますが、ジョージアの代表的な民族衣装には、男性用の「チョハ」、女性用には「カバ」と呼ばれるものがあります。チョハは宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』に登場するナウシカの衣装のモデルになったともいわれていて、その歴史は古く9世紀ごろまでさかのぼることができます。
 まず目に飛び込んでくるのは、胸元についた火薬入れポケットです。腰には短剣を指すためのベルトがついており、この衣装からもジョージア人が周辺国と数々の戦いを繰り返してきた歴史が感じられます。ソビエト連邦時代にはチョハが一時的に着用されなくなった時期がありましたが、現在では結婚式、お祭りなどに着用される正装です。2019年10月22日の天皇陛下の即位礼正殿の儀で、駐日ジョージア大使のティムラズ・レジャバ氏がチョハを着用して参列し、そのインパクトのある衣装が大きな反響を呼びました。

女性用の民族衣装「カバ」を身に着けた筆者

 一方、女性の民族衣装であるカバは、袖の幅がたっぷりしたロング丈のワンピースです。私がコーカサス地域のスバネティ地方で着させてもらったカバは、寒冷地帯の衣装とは思えないほど軽くサラッとした生地で気持ちのよい肌感触りでした。広く開いた首元には、「チャプラス」という金属製のネックレスをかけました。チャプラスには月、太陽や星がデザインされています。ひと昔前は非常に高価なものとして、これを手に入れるために牛12頭と交換していたのだそう。地元ではフォルクローレ(民俗音楽)を踊るときなどに着用されているようでした。

 ちなみに、東京・赤坂にある駐日ジョージア大使館では、このチョハとカバの無料貸し出しが行われています。日本に居ながらにしてジョージアの民族衣装に触れられるいい機会ですので、気になる方は大使館に問い合わせをしてみてください。(つづく)


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 “ヨーロッパ最後の秘境”と呼ばれ、今注目の国ジョージア。現地の一般家庭で生活を共にしながら、首都トビリシはもちろん、ジョージア人にとっても“秘境中の秘境”であるスバネティ地方まで、ほぼすべての地方を旅した定住旅行家・ERIKOさんの紀行エッセイです。壮大な景色やユネスコ世界遺産の建造物、素朴で温かな人々との出会いなど、“旅暮らし”だからこそ見えてくるジョージアの知られざる魅力を、豊富なカラー写真とともに紹介します。

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【エリコ】
鳥取県米子市生まれ。世界のさまざまな地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、サハ共和国、イラン、スペイン、パラオ、カルムイク共和国など約50カ国にて106家族との暮らしを体験。とっとりふるさと大使。米子市観光大使。著書に『ジョージア旅暮らし20景』(東海教育研究所)、『暮らす旅びと』(かまくら春秋社)、『せかいのトイレ』(JMAM)、『世界の家 世界の暮らし①~③』(汐文社)など。NEPOEHT所属(モデル)※写真:KATUMI ITO
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