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美しいくらし
ジョージアで出会ったモノとコト モデル・定住旅行家
ERIKO
第3回 衣・食・住・舞の暮らし
 衣食住は、どの国でも暮らしを構成する3大要素として生活の中心に据えられています。この3つの柱に加え、「踊る」ことが暮らしの中に大きく組み込まれている国々もあります。それに代表されるのはキューバ、コロンビア、ブラジルなどのラテンの国。これらの国々では音楽がいつもどこかから聞こえてくるような、日常生活の中にリズムがあふれています。幼少期から周囲の大人たちが踊りのステップ教えたり、学校の授業にも組み込まれていたりするほど、踊ることが身近なものとしてあります。
 実は私自身、中学生のころからダンスを趣味としていて、定住旅行中に現地の踊りを習って一緒に踊ることもあります。見様見真似でも踊りに参加することで、現地の人たちはこちらが驚くほど喜んでくれます。そんなとき、踊りはコミュニケーションツールの一つだな、という思いを新たにします。


 ジョージアでも、踊りが暮らしの中で欠かすことのできないものとしてありました。首都のトビリシに滞在中、「エリシオニ」という舞踊団の練習を見学させてもらったことがありました。男女合わせて50名以上の踊り手を囲むように、音楽を奏でる楽器の演奏者たちや、ポリフォニーと呼ばれる多声音楽合唱の歌い手たちが並んでいました。
 各地方や村に、それぞれの伝統舞踊があり、カズベグリ、カルトゥリ、ホルミなどの種類の踊りがあります。エリシオニ舞踊団が見せてくれたのは、レズギンカ型舞踊と呼ばれるものでした。男性は腰に短剣を帯刀し、「チョハ」という伝統衣装に膝上までくる長いブーツを履き、爪先立ちをしながら足先で素早い動作を繰り広げます。女性の衣装は「カバ」と呼ばれ、ロングスカートに体のラインが美しく見えるのが特徴です。


 女性ダンサーは手足をバレリーナのように上下左右に優雅に動かしながら踊りますが、高くジャンプして空中で回転したり、地面を踏みつけながら力強く踊ったりする男性の舞いを引き立てる役割のようにも見えました。躍動感と雅やかさの舞いのコントラスト、身体に振動を感じるほどのポリフォニーの厚い合唱に五感が圧倒されっぱなしでした。

 プロだけが踊りを体得しているわけではありません。伝統的な宴会「スプラ」が行われる際にも舞いが披露されます。美味しい食事とワインで心が満たされた大人たちはペアになって艶やかに踊り、子どもたちも大人たちに囲まれ軽快な踊りを披露します。大人たちは「カルギ! カルギ!」(いいぞ、いいぞ)と子どもたちを囃し立てます。
 ジョージアでは物心ついたころから、自分たちの村の踊りを身につけ、スプラのような場面で仲間との共有を繰り返します。その土地の食事やワインを口にし、歌や踊りを体で感じることは、生まれ育った土地へ自分自身が帰属していく行為そのものだと思いました。「衣・食・住、そして舞」のある暮らし、それがジョージアにあります。(つづく)

【WEBサイト・ちきゅうの暮らしかた】http://chikyunokurashi.com/profile/
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 “ヨーロッパ最後の秘境”と呼ばれ、今注目の国ジョージア。現地の一般家庭で生活を共にしながら、首都トビリシはもちろん、ジョージア人にとっても“秘境中の秘境”であるスバネティ地方まで、ほぼすべての地方を旅した定住旅行家・ERIKOさんの紀行エッセイです。壮大な景色やユネスコ世界遺産の建造物、素朴で温かな人々との出会いなど、“旅暮らし”だからこそ見えてくるジョージアの知られざる魅力を、豊富なカラー写真とともに紹介します。

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【エリコ】
鳥取県米子市生まれ。世界のさまざまな地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、サハ共和国、イラン、スペイン、パラオ、カルムイク共和国など約50カ国にて106家族との暮らしを体験。とっとりふるさと大使。米子市観光大使。著書に『ジョージア旅暮らし20景』(東海教育研究所)、『暮らす旅びと』(かまくら春秋社)、『せかいのトイレ』(JMAM)、『世界の家 世界の暮らし①~③』(汐文社)など。NEPOEHT所属(モデル)※写真:KATUMI ITO
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