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きれいをつくる
今がチャンス!“一生モノの運動習慣” 東海大学体育学部教授
萩 裕美子
第2回 大人が運動習慣を身に付けるコツ
 世界各地で新型コロナウイルスが猛威を振るい、外出が制限されていたころ、パリで公園や川沿いを走る多くの人を報じるニュースに驚きました。運動せずにはいられない人たち……。それは、「子どものころから体を動かすことの大切さを知っているからです」と、運動習慣の啓蒙などに取り組む東海大学の萩裕美子教授は指摘します。

――子どものころからの運動習慣がいかに大切か、前回、萩先生から聞いた話でよくわかりました。一方で、そんな習慣がないままに大人になり、すっかり運動から遠ざかっている私たちが運動習慣を身につけるのは難しそうです。

 仕事との両立ができないとか、体を動かすことが面倒だと思っている人に、いくら「スポーツをしましょう」と呼びかけても響かないですよね。そうした人たちに運動習慣を身に付けてもらうには、運動を楽しく継続的に親しむことが大切です。そのための方法を探り、提案することは私の研究課題でもあります。
 運動というと、着替えて道具を準備して施設に行って1~2時間はやらなければ、と気負っていませんか? でも「5分か10分、仕事の合間にストレッチや背伸びをするだけでいいですよ」と言われたらいかがでしょう。 

小学生のラジオ体操

 ラジオ体操やテレビ体操だっていいのです。やってみると、若いころには難なくできた動きができなかったり、すぐに息が上がってしまったりと、自分の体力低下に気づきます。そうしたらしめたもの。その日から簡単なストレッチを5分や10分、続けてみようと思うのでは? 

――ラジオ体操なら小学校のころ、夏休みに早起きしてやったので今でも覚えています!

 音楽に合わせて自然と体が動くように刷り込まれているのはすごいことですよね(笑)。以前、大学で学生たちの宿泊実習があったときのこと。朝、あの音楽がかかると日本人学生が一斉に同じ体操を始めるので、海外からの留学生たちが驚いていました。世界的に見てもあのような体操はありません。
 ラジオ体操はスウェーデン体操やデンマーク体操の影響を受けてつくられたものとされ、体の動きがよく考えられていて、きちんとやればかなりきつい運動です。やってみれば、子どものころはできたのに今は体が硬くなっていてできないとか、体のあちこちが痛くなってしまうなど、自分の変化に気づきます。続けているうちに体がだんだんほぐれてきて、スムーズにできなかった動きができるようになる。それが励みになれば、「また明日もやろう」という気持ちになると思うのです。

萩裕美子教授

 運動習慣を身に付けるためには、大事なポイントがあります。まず、続けることで得られる効果を実感できるようにすること。たとえば体重を減らすことだけをターゲットにした場合、食事制限はすぐに結果が出ますが、運動は一生懸命に頑張っても成果が出るのに時間がかかります。それが運動が続かない理由でもあるのですが、体重の増減ではなく日々の体調の変化に目先を移してみれば、「よく眠れるようになった」とか「おいしく食べられるようになった」など、必ず実感があるはず。その気づきが大事です。

 もうひとつは、記録をつけること。たとえば軽い運動をした日はカレンダーに印をつける。面白いもので、やがて運動をするというより、印をつけずにはいられなくなるのです。これは、行動心理学的に行動変容をさせるテクニックでもあります。
 さらに、目標を立てたら周りに宣言して、プレッシャーをかけてもらうことも有効です。その目標を達成したら自分にご褒美をあげるのも、継続の一助になるでしょう。
 家族や仕事の同僚、友人など、近くにいる人同士で励まし合うのも継続の秘訣です。たとえ数分の運動でも、習慣のない人がひとりで淡々と続けるのは難しいもの。そこに身近な人からの誘いかけや励ましがあれば、切磋琢磨して続けられそうだと思いませんか?(つづく)

 そういえばコロナ禍以後、夕方など連れだって散歩する人たちを見かけることが多くなりました。誰かと一緒ならウオーキングも続けられるというわけですね。そう考えると、継続するためには面倒な着替えや移動などがなく、手軽にいつでもできる運動を選ぶことも秘訣だと思います。さて、何をしようか……と考えていたら萩先生から「ところで、旅行はお好きですか?」との声。さて、そのココロは?

(構成:白田敦子)
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【はぎ・ゆみこ】
東京都生まれ。東京学芸大学教育学部(保健体育)、女子栄養大学栄養学部卒業。女子栄養大学大学院研究生を経て博士(保健学)取得。東海大学体育学部教授、同大学大学院体育学研究科長。スポーツ庁健康スポーツ課ビジネスパーソン向け国民運動推進協議会委員、公益財団法人健康・体力づくり事業財団運動指導者養成事業運営委員会専門部会委員、神奈川県広域スポーツセンター運営委員会委員などを歴任。NPO法人フィジカライン理事長。共著に『健康・スポーツの指導(フィットネスシリーズ)』(建帛社)、『知ってほしい女性とスポーツ』(サンウェイ出版)、『頭と体のスポーツ(玉川百科こども博物誌)』(玉川大学出版部)など。
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