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美しいくらし
対談:今注目の国ジョージアへ、ようこそ!
ERIKO×ティムラズ・レジャバ
後編:意外!? 共通点が多いジョージアと日本
 モデルで定住旅行家のERIKOさんの新刊『ジョージア旅暮らし20景』の刊行を記念した、ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使とERIKOさんの対談。前編では、多様な表情をもつジョージアの自然と、そこに息づく人々の「おもてなし」の心をめぐる話に花を咲かせたお二人。続く後編では、シュクメルリのブームで注目を浴びたジョージアの食と、そこに欠かせぬワインの話題から始まります。

ジョージア大使館公認観光大使のザザと「かもめの本棚」広報宣伝担当のカモメのるー

レジャバ大使 シュクメルリだけではなく、ジョージアで最も頻繁に食されるチーズたっぷりのパン「ハチャプリ」や、大きな小籠包のような「ヒンカリ」なども、日本で知られるようになってきました。私も子どものころはヒンカリが大好きでしたが、最近は旬のハーブを漬け込んだオイルをかけたシンプルなサラダもおいしいと思うようになりました。ジョージア料理にはハーブを多用してつくるスパイシーな「アジカソース」や「スワネティソルト」など、日本人の皆さんにも受け入れていただけると思う味わいが多くあります。

ERIKO ジョージアといえばワインも欠かせませんよね。私はこれまで定住旅行した国々でさまざまなワインに出会いましたが、ジョージアのワインは「ワイン」という飲み物だけではない、特別な「何か」を感じました。

レジャバ大使 ワイン発祥の地といわれるだけあり、ブドウは土着の固有種が500種類以上もあります。各地域でさまざまなワインがつくられている点は、日本の酒蔵と似ているように感じます。日本でも旅先には必ずといっていいほど酒蔵があり、その周りには地域で食べられてきたおいしいものがあるでしょう。地域限定と季節限定という味わいの楽しみ方は、ジョージアと日本との食の共通点なのかもしれません。

ERIKO 私は東部のカヘティ地方で、ジョージア最大規模のワイナリーを訪ねました。見渡す限りのブドウ畑もさることながら、驚いたのは「クヴェヴリ」と呼ばれる縦長の甕(かめ)を地中に埋め込み、その中に踏みつぶした果汁や果皮、果肉、種を丸ごと入れて発酵させる昔ながらの醸造法です。この甕は約8000年前からこの地方で用いられていて、ジョージアの伝統的なワイン製法はユネスコの世界文化遺産にも登録されていますよね。

クヴェヴリ


レジャバ大使 そのとおりです。「ワインは樽で熟成させるもの」と思われがちですが、それとは全く異なる製法のジョージアワインはブドウのおいしさがギュッと詰まった味わいと豊かな香りが特徴です。クヴェヴリを土に埋めて醸造するので“大地の力”も加わっているのかもしれないとさえ思います。どんな料理とも合わせやすく、かつ料理の味を引き出してくれるワインです。

ERIKO ほとんどの家庭で自家製のワインをつくっているのにも驚きました。私が滞在した家では、ペットボトルのような容器に入って自家製ワインが出てくることがしばしば(笑)。自家製ワインはアルコール度数が低くて飲みやすいのですが、タンニンがしっかりしていて黄金色。淡泊だけれど温かく、素朴な味がして私も大好きです。地元の人に「元気ですか?」と聞くと、家族のことより「ブドウはこうだ」とか「ワインはどんな感じだ」と最初に話すほど。まるで自分の子どものように大切にワインを育てている印象を受けました。

レジャバ大使 今年の収穫はどうなるかとか、ブドウを何トン収穫できたとか、ワインを何リットルつくったとか、とにかくワインにまつわることばかり話していますね(笑)。ジョージアでは、家族や親戚の誰かが必ずワインづくりをしています。私の祖父もおじたちもワイナリーを持っていますし、庭には必ずブドウ畑があります。

ERIKO ジョージアの人たちがそれほど思い入れのあるワインを、私たち日本人にどのように味わってもらいたいと思いますか?

レジャバ大使 ジョージアワインでいちばん大事なのは、いかに皆と一緒に楽しむかということ。その文化が、前回もお話しした「スプラ」です。私は、スプラは日本の茶道と並んで世界的にも珍しい文化だと思っています。茶道には、お客さまをもてなし、お客さまの気持ちを引き出すための細かな心配りが求められますが、スプラも根底は同じ。どうしたら皆が楽しめる“型”をつくるかが大事なのです。日常生活の一部であるお茶やワインに付加価値をつけて楽しもうとするところは、日本とジョージアに共通している点です。面白いと思いませんか?

ERIKO 私が参加したスプラでも、ワインを飲んだり料理を楽しむだけではなく、参加者一人ひとりが演説をしたり詩を読んだり、歌やダンスをして絆を深めていましたね。一見すると自由で開放的なスプラですが、「人生を否定的に捉える発言や人の悪口はご法度」という暗黙のルールがあることを、スプラの参加メンバーから教えてもらいました。

レジャバ大使 スプラにおける重要な点は、お互いの気持ちやその場の雰囲気をしっかり感知して、どのような進め方をするかというところです。スプラには、どんなに仲が悪い人でも同席したらしがらみは忘れて仲良くしなければならないという不文律のようなものがあります。たとえ敵であろうと、お客さまとして自分の家に来たら心からもてなす。それはいわば戦時における究極の選択でもあり、ジョージアの絶対的なる精神なのです。

ERIKO 私が『ジョージア旅暮らし20景』で伝えたかったのは、まさにそのジョージアの心、精神です。それぞれの場所で懸命に生きる人びととの出会いと別れの物語を通して、ジョージアの素顔を少しでも知ってもらえたらうれしいですね。そして、皆さんにもぜひジョージアを旅してほしいと思っています。(おわり)

――栃ノ心、臥牙丸、黒海。大相撲ファンならずとも一度は耳にしたことのある力士たちも、ジョージア出身なのです。いろいろなところで共通点がありそうなジョージアと日本。外交関係樹立30周年の今年、ぜひ見て、読んで、食べて、飲んで……ジョージアの魅力にふれてください。

(構成:白田敦子)

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『ジョージア旅暮らし20景』


定価2,200円(税込)

 “ヨーロッパ最後の秘境”と呼ばれ、今注目の国ジョージア。現地の一般家庭で生活を共にしながら、首都トビリシはもちろん、ジョージア人にとっても“秘境中の秘境”であるスバネティ地方まで、ほぼすべての地方を旅した定住旅行家・ERIKOさんの紀行エッセイです。壮大な景色やユネスコ世界遺産の建造物、素朴で温かな人々との出会いなど、“旅暮らし”だからこそ見えてくるジョージアの知られざる魅力を、豊富なカラー写真とともに紹介します。

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【エリコ×ティムラズ・レジャバ】
◆ERIKO(モデル・定住旅行家)
鳥取県米子市生まれ。東京コレクションでモデルデビュー。「定住旅行家」として世界のさまざまな地域で現地の人々の家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。これまで約50カ国にて106家族との暮らしを体験。とっとりふるさと大使。米子市観光大使。著書に『暮らす旅びと』(かまくら春秋社)、『世界の家、世界の暮らし①~③』(汐文社)など。

◆ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)
1988年ジョージアの首都トビリシ生まれ。4歳のときに父の仕事の関係で来日。ジョージアと日本を行き来する少年時代を過ごす。2011年早稲田大学卒業後、キッコーマン株式会社で海外営業マーケティング・首都圏営業を担当。15年にジョージアへ帰国しジョージア・日本間の経済活動に携わる。18年にジョージア外務省入省。19 年より在日ジョージア大使館臨時代理大使を務め、21年11月に特命全権大使に就任。流暢な日本語でSNSなどを通じて母国の魅力を積極的に発信している。
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