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食べるしあわせ
心ときめくチョコレートワールド チョコレートソムリエ
さつたにかなこ
最終回 チョコとカカオの新たな挑戦!
 毎年開催されるチョコレートの国際コンクールをご存じでしょうか? 世界中のおいしいチョコレートが集まるのかと思いきや、エントリーした銘柄すべてがおいしいとは限らないなんてことも。審査員ならではの知られざる苦労があるようです……。

――2012年に創設された「インターナショナル・チョコレート・アワード(ICA)」の審査員を2014年から務めていらっしゃいます。これはどういった大会なのですか?

2016年にペルーで開催されたインターナショナル・チョコレート・アワード(ICA)の様子

 カカオ豆生産者やチョコレートメーカーの支援、マーケットの発展などを目的に行われるチョコレートの世界コンクールです。地方大会と世界大会を勝ち抜いたファイナリストの中から最終投票によってカテゴリーごとに金・銀・銅のアワードが決定されます。
 この大会の良い点は、参加規約に当てはまれば誰でもエントリーが可能なこと。さらに、忖度なく公平にジャッジされることです。審査はメーカーの大小やスポンサーの有無に惑わされることなく、ブランド名を伏せたブラインドテイスティングで行われるほか、レーティング(等級分けや数値化)に偏りが出ないよう、審査員は食歴も好みも異なる各エリアの審査員で構成されています。

――メーカーにとって素材やレシピを突き詰めた自慢の一枚を披露する絶好のチャンスですね。

 受賞歴は味や品質が優れていることの証です。普段から地道な努力を続けるカカオ生産者や、小規模ながら味を追求するショコラティエやメーカーにとって勲章のようなもの。モノづくりの原動力になることは間違いないですね。有名メーカーでも無名の小さな工房に勝てない、なんてこともよくあることなんですよ。
 たとえ落選しても、良い点や悪い点の講評がフィードバックされるので参加するメリットは大きいと思います。製造技術や品質の向上をサポートする取り組みも盛んです。

世界各国から集まった審査員がテイスティングして品質をジャッジしている

――厳正に行われる真剣勝負のようですが、国際的な大会ですし審査する側も手が抜けないですね。

 出身国や文化が異なる人が個々の基準でジャッジするので、評価が割れることもよくあることです。私はあくまでも日本人の味覚代表という気持ちで参加するようにしています。
 本音を言えば、身体的にかなりきついです。多いときで年間約3000銘柄の審査用サンプルを試食すると、チョコレートの成分上、油脂が多いため体の負担が大きいですし、表面はツルっとして見えても実は細かい凹凸があるので舐めるとヤスリのようになって舌が切れてしまうことも……。
 でも、ときにアッと驚く逸品にめぐり会えることがあるんです。口の中で爆発するくらいの新鮮で芳醇な香りや、滑らかな口溶けとか。カカオ豆をしっかりと感じられる唯一無二の味わい。そういうキラリと光るものを見つけると、どこの工房なのか、どんな原料を使っているのか、好奇心を掻き立てられます。

写真:編集部

――舌が切れてしまうのは痛そうですが、さつたにさんの心に刺さる名品をぜひ味わってみたいです! では、私たちが実際にBean to Barブランドを求めてショップに行った場合、どういう視点で選べばよいでしょうか?

 カカオ豆の生産地、食感、製造元、パッケージと選ぶポイントはたくさんあるので、まずは気になったものを食べてみることですね。そこから味や好みを絞り込んでいくと楽しみが自然と広がります。たとえ自分は酸味が苦手だと思っていても、ハチミツレモンのようなさわやかな酸味は好きというケースもあるので、あまり先入観にとらわれないで挑戦してほしいですね。
 もちろん、詳しい店員さんに好みや食べてみたい味を伝えていくつか提案してもらうのもおすすめです。ブランド誕生の背景や製造時のエピソードなどに興味を持つ方も多いので、そこを掘り下げていくのもBean to Barの面白さだと思います。

――お話を聞いていたら味の一期一会をすぐにでも実践してみたくなりました(笑)。それでは最後に、魅力あふれるBean to Barブランドは今後どのように進化していきそうですか?

 最近はカカオポリフェノールなどの健康や美容の効果が注目されていて、砂糖を使っていないカカオ豆100%を選ぶ方やカカオ豆含有率を気にする方が多くなってきました。今後はそういったニーズを受けてカカオ豆にもっと関心が高まり、可能性が広がるのではないかと期待しています。
 また、ワインやウイスキーなどの嗜好品と同じで、お酒やコーヒーに合わせて銘柄を選んだり、カカオ豆産地に思いを重ねたり、これまでのチョコレートの枠を超えた新しい価値観に出会えるのがBean to Barの魅力です。味はもちろん生産地や各メーカーの情熱など、バラエティーに富んだ味わいをぜひ楽しんでほしいですね。(おわり)

 チョコレートの新しいカテゴリーともいえるBean to Barの世界はいかがでしたか? カカオ豆をダイレクトに楽しめる風味豊かな一枚は、チョコレートづくりにかかわる人たちの熱き思いと努力の結晶。そこには、ただ「おいしい」だけでは終わらない、奥深い味わいに導くさまざまな取り組みがありました。さつたにさんの取材で、私たちが知っているチョコレートの魅力はほんの一部に過ぎなかった……と気づく一方で、Bean to Barを知ればチョコレートを選ぶ楽しさがさらに広がる期待感も。世界中の多種多様なブランドが味わえる今だからこそ、新たな出会いを体験してみませんか?




(写真提供・さつなにかなこ、構成・狭間由恵)

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【さつたに・かなこ】
株式会社トモエサヴールの代表、チョコレートソムリエ。1998年より高級輸入チョコレート店の店長職、カフェプロデュース、アルバイト販売員教育担当など、輸入チョコレートを中心とした販売に関する全般の業務において活動。2007年よりチョコレートの楽しみ方などを紹介するイベントの企画や運営を担当。2013年に「トモエサヴール」を創業し、輸入業、コンサルティング、イベント主催、執筆と活動の幅を広げる。2014年よりチョコレートの世界コンクール「Internatilnal Chocolate Awards World Final」の審査員を務める。
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