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子どものこれから
将棋×子育てのイイ関係 女流棋士
中倉彰子
最終回 考えるから面白い(下)
一度覚えれば一生楽しめる
 棋士は審判や指導対局をするために、全国各地の将棋大会に招かれます。先日は秋田県大仙市で開かれた「大仙市市民大会」に行ってきました。こうした大会では、レベルによってクラスが分かれているとはいえ、大人対子どもという年齢差のある対局も多く見受けられます。子どもから年配の方まで幅広い世代が参加できる将棋大会では、希薄になりつつある世代間交流が今も盛んに繰り広げらているのです。当日会場には、4年前に伺ったときにお会いした80代の男性もいらっしゃいました。変わらずお元気な様子で、最近はお孫さんと将棋を楽しまれているそうです。連載の「第4回 世代間コミュニケーション・下」にも書いたとおり、私の父もわが家に遊びに来たときは、よく孫と将棋を指しているのですが、将棋はスポーツと違って体力が落ちても関係なくできる競技なのだとつくづく感じます。
 少し調べてみると、2011年に学会で発表された「地域高齢者における内側側頭葉の脳萎縮と日常生活活動との関係」という論文では、65歳以上の地域在住高齢者125人を対象とした調査を実施したところ「頭を使う活動(将棋や学習)」をしている方たちの脳萎縮度は、活動していない方たちの数値より小さかったという結論が出ているようです。つまり、将棋のように頭を使う活動には、高齢期における認知症の発症遅延や認知機能の維持にとって有効である可能性があると示唆されています。考える力で勝負する将棋は健康維持にもひと役買うゲームでもあるのですね。

 さて、2017年8月から始まったこの連載も、今回で最終回となりました。将棋と子育ての関わりについて、私なりの視点や切り口でお伝えしてまいりましたが、これを機に、伝統文化の将棋に少しでも興味を持っていただけると大変うれしく思います。さまざまな魅力と可能性を秘めた将棋をぜひ親子で体験してみてください。一度覚えると一生イイ関係が続くはずですよ!(完)

イラスト:高野優



――先を読む力、思考力、礼儀作法、コミュニケーション力……と、毎回連載で取り上げられるテーマは、自己啓発本のタイトルになるような言葉ばかり。今や子どもだけでなく社会生活を営む大人たちも、将棋の魅力を見直したほうがいいのかもしれません。連載を担当するにあたって、幼いころに将棋をなぜやっておかなかったのか、ただただ後悔の念に駆られた私。人生のさまざまな局面で「飛車」「角」で勝負するのか、「金」「銀」で守りに出るのか、はたまた「香車」でけん制するのか、将棋を知っていたら、もしかして私の人生変わっていたかしら??
 全10回上・下の挿し絵を担当してくれたのは、育児漫画家の高野優さんです。カラフルでかわいいイラストは毎回好評で、親の気持ちを代弁したかのようなユーモアたっぷりのコメントでも楽しませてくれました。将棋の奥深い魅力をわかりやすくお伝えしようと、女流棋士で子育てまっ最中の中倉さんと、将棋初心者でちょっと先輩ママ高野さんのコンビでお届けした「将棋×子育てのイイ関係」。1年間ありがとうございました!(編集部)

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【なかくらあきこ・たかのゆう】
★文/なかくら・あきこ★東京都出身。女流二段。株式会社いつつ代表取締役。6歳から将棋を始める。1991、92年の女流アマ名人で連続優勝を果たし、94年に高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。その後、NHK杯将棋トーナメントなどテレビ番組の司会を務めるなどメディアで幅広く活躍。2007年に公益社団法人日本女子プロ将棋協会へ移籍。15年3月に現役を引退し、同年10月に株式会社いつつを設立。将棋と知育・育児を結びつけるような活動を広く展開し、お母さん向けの講演なども行う。将棋入門教材「はじめての将棋手引帖」の制作や、絵本『しょうぎのくにのだいぼうけん』(講談社)も出版。

★絵/たかの・ゆう★北海道出身。育児漫画家・絵本作家。NHK教育テレビにて『土よう親じかん』(2008年4月~2009年3月)、『となりの子育て』(2009年4月~2011年3月)の司会を務め、子育て世代から支持が厚い。『よっつめの約束』(主婦の友社)など著書は約40冊に上り、台湾や韓国などでも翻訳本が発売されている。また、マンガを描きながら話をするという独自のスタイルで、育児をテーマにした講演会を全国で開催。2015年には、特定非営利活動法人日本マザーズ協会が主催する「第8回ベストマザー賞2015・文芸部門」を受賞。
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