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きれいをつくる
捨てられるコスメをもっと楽しく! コスメロス協会代表・ヘアメイクアップアーティスト
イガリシノブ
最終回 メイクの力で世の中をハッピーに
 行き場を失ったコスメが、キラキラと輝く色鮮やかなアートを制作する画材として生まれ変われるとはいえ、それは問題解決のプロセスの一部にすぎません。消費者がコスメロスを削減するためにできることはないのでしょうか? 私たちが普段使っているコスメとの向き合い方について聞きました。

「ポーチの日」に所有するコスメをチェック!

(撮影:前田光代)

 私は化粧品のプロデュース側として商品の企画や開発からかかわっているので、やはり一度買ったコスメは長く使ってほしい、できれば使いきってほしいという気持ちが強くあります。いろいろ悩んで購入したものがあっさり捨てられてしまう運命にあるのはとても残念なことです。頭ではわかっていても、持て余しているコスメを実際にどうしたらよいのか、誰も教えてくれません。そうした声に対してコスメロス協会では動画やSNSなどを使ってさまざまな情報を発信しています。

 その一つが「ポーチの日」の設定です。美容やコスメの総合情報サイトとコラボして行っている活動で、毎月8日を「ポーチの日」と決め、化粧ポーチの中を整理して、自分が持っているコスメを見直そうというものです。
 皆さんは、自分がどんなコスメをどれくらい持っているとか意外と知らないのではないでしょうか?  衝動買いをしたけれど、引き出しの奥に眠らせてしまっているとか、なかなか使いきれずにいるコスメがきっとポーチの中に1つや2つはあるはずです。私たちはそうしたコスメを上手に使う工夫や、ほったらかしにしていたコスメをよみがえらせる方法などのお役立ち情報を「ポーチの日」に発信しています。

(写真:編集部)

 例えばコスメの消費期限。案外知られていないのですが、商品に記載のないものはだいたい開封したら2年、未開封でも3~5年が消費期限だといわれています。いつ購入したものなのか、まずはポーチの中に目を向けること。自分が使っているコスメを知ることから始めて、適切に最後まで使いきることを心がけてほしい。それがコスメロスを減らす第一歩だと考えています。

 無駄なコスメを出さないという発想で「マスコス」という考え方も提案しています。マスコスつまりマストコスメとは、つまり自分にとってこれさえあれば安心と思えるマストなコスメを見つけること。お気に入りの服を着回すように、自分のTPOに合わせた必要なコスメだけを持とういう考え方です。世の中には「これがベストコスメ」といった情報があふれていますが、その人が必要とするコスメは一人ひとり違うはず。他人が選んだものではなくて、自分に合う色やテクスチャーをしっかり選ぼうと強く言いたい! 自分で選んだマスコスを大切に使うことはコスメロス削減に必ずつながります。

メイクアップアーティストとしての使命

廃棄されるコスメの箱もリサイクルへ

 コスメロスの活動を始めて約1年になりますが、この1年で、目に見えて企業などの対応も変わってきました。コスメを生産するメーカーだけでなく、販売している百貨店などもコスメロスを減らすための取り組みを始めています。コスメロス協会を立ち上げてからは、地方自治体からも声がかかるようになり、昨年も佐賀県でコスメの絵具を使ったアートを展示するイベントや、コスメロスについての講演をしてきました。今もいくつかの自治体からお話をいただいています。この問題に多くの人が関心を持って、手を挙げてくれる人が増えれば、思ってもみなかったアイデアがいろいろと生まれてくるのではないでしょうか。

 コスメロス協会としても活動は始まったばかりです。やりたいことはまだまだいっぱいあります。最先端の個性的なモード系ファッションではなくて、一般の人を対象にしたメイクアップの仕事をしてきた私だからこそできることやり遂げたい。コスメロスへの問題意識が10年後、20年後、次世代へと伝わっていけば、今はまだ競い合ってコスメを作っている業界も少しずつ変わっていくんじゃないかな。私たちで少しずつでも変えていかなければなりませんね。
 

(撮影:前田光代)

 最後に……日本人はもっとメイクをしましょう(笑)。 私は、メイクは街の明かりだと思っています。メイクをしたら自分を着飾りたくなるし、お出かけもしたくなるでしょう。メイクは衣食住のあらゆるところに連動していて、メイクをしてオシャレをした人たちが増えれば、街は華やぐし、人の気持ちも明るくなる。それによる経済効果も期待できます。メイクが持っている可能性や魅力もコスメロスの活動とともに発信していきたいと思います。(おわり)
――イガリさんがコスメロス協会を立ち上げたのはわずか1年前。今では企業の協賛を得たり、地方自治体のイベントに招かれたりと、その活動は大きく広がってきています。牛乳パックやペットボトルなどは廃棄される量が膨大なので人々の問題意識も高く、社会全体でリサイクルに取り組んでいますが、コスメの廃棄量はそれほどまで多くなく、まだまだ注目度が低いとイガリさんは言います。まずは自分のポーチを開けて、そこにあるコスメたちのことを考えるところから始めてみませんか。

(構成:小田中雅子、写真提供:コスメロス協会)

☆コスメロス協会のInstagram
https://www.instagram.com/stop_cosmeticsloss/
☆イガリシノブさんのInstagram・YouTube
https://www.instagram.com/igari_shinobu/
https://x.gd/UCZRK
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【いがり・しのぶ】
ヘアメイクアップアーティスト。メイクスクールで学んだ後、メイク修業のためにロンドンへ。帰国後に美容専門学校を卒業。2005年よりBEAUTRIUMヘアメイクチーム所属。雑誌・広告などの媒体でヘアメイクを手がけ、多くの女優やモデル、アーティストなどから支持される。コスメブランド「WHOMEE」の化粧品開発ディレクターやメイク講師としても活躍。主な著書に、『イガリメイク、しちゃう?』(宝島社)、『裏イガリメイク、はいどうぞ』(宝島社)、『イガリ印 365日メイク図鑑』(講談社)など多数。
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