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子どものこれから
「子どもの権利」を子どもの力で 早稲田大学里親研究会代表
川名はつ子
新刊「権利条約ワークブック」の監修者に聞く(後編)
 新刊『はじめまして、子どもの権利条約ワークブック』(発行:東海教育研究所)の監修者・川名はつ子さんは、昨年3月に早稲田大学教授を定年退職した後、長年の夢であった子どもの居場所づくりに奔走。今年8月に一般社団法人を立ち上げ、子どもの居場所「ピノッキオ」を東京都北区の集合住宅の1階に開設しました。

――「子どもの権利条約」を社会に浸透させたいという思いから、絵本やワークブックの制作に携わったことは前編でお聞きしましたが、子どもの居場所づくりは新たな挑戦ですね。

 実は早稲田大学の教員時代から、“退職後は子どもたちと日常的に接しながら、子どもの権利を尊重する社会の実現に向けて実践的な活動に取り組もう”と考えていました。子どもたちに安心できる居場所を提供することは、子どもの権利条約の絵本やワークブック制作の延長線上にあるのです。

 現在は、月曜から金曜の午前10時から夕方まで子どものために開放。午後2時半ごろから、一人親の子どもや親の帰宅が遅い子ども、外国人の子どもなど、授業を終えた小学生が十数人集まって、思い思いに遊んでいます。このほか月に2回、子ども20人と大人10人を対象に夕食を供する「子ども食堂」も実施しています。

――新型コロナウイルスの感染拡大により、子どもたちを取り巻く環境には多くの制約が生まれました。そんな中での子どもの居場所の開設は、試行錯誤の連続だと思います。

 たとえば給食の際、「いただきます」とあいさつする以外は黙って食事をしなければならないなど、学校生活でもさまざまな制約があると聞いています。ピノッキオの「子ども食堂」では、料理の衛生管理や参加者の手指消毒はもちろん、席の配置や2組に分けて実施するといった感染対策を実施。楽しくおしゃべりをしながら食事ができる環境をできる限り整えています。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、学校や日常生活でさまざまな制約があるからこそ、ここではできるだけ子どもの希望をかなえてあげたい。そこで、遊び道具の安全な使い方やルールを伝えたうえで自主性を尊重し、見守りに徹するように心がけています。開設してまだ数カ月ですが、大人との信頼関係が築けていれば、子どもはしっかりと自主管理ができるのだと実感しています。

――今後はどのような活動を展開したいと考えていますか?

 「子ども食堂」をはじめ、里親家庭や児童養護施設などの出身者が相談したり交流したりできる「よろず相談窓口」、ワンオペ育児などで疲れている母親の相談や支援をする「子育てカフェ」、外国人向けの日本語教室など「外国人の方への支援」の4つの事業を計画しています。近隣の方から「高齢者向けの食堂も実施してほしい」という希望も出されていますので、子どもに限らず、多世代の人が食事をしたり交流したりできる機会を設けるなど、地域のニーズに応じて内容を充実させていくのも楽しみです。

 さらに、絵本『はじめまして、子どもの権利条約』と今回制作したワークブックを使ったワークショップを開くなど、ピノッキオを、「子どもの権利条約を発信し、広めていく拠点」にしたいと考えています。そのための第一歩として、室内の壁にノーマンさんの原画ポスターを飾りました。遊びに来る子どもたちに、子どもの権利条約や絵本について話す機会はまだつくれていませんが、壁に飾られているポスターを見て、興味を示してくれる子どもはいます。

 最終的な目標は、子どもの権利条約をベースとした児童虐待防止と子育て支援の充実です。今できることをしっかりと積み上げながら、子どもたちが健やかに成長できる環境づくりに向けて、着実に歩みを進めていきたいと思っています。(おわり)

(構成・川島省子)

◆子どもの居場所「ピノッキオ」のHPはコチラ⇒

『はじめまして、子どもの権利条約ワークブック』
監修:川名はつ子 イラスト:チャーリー・ノーマン
定価(本体800+税)

1989年に国際連合で採択された「子どもの権利条約」全54条の中から10の条文を抜粋。絵本『はじめまして、子どもの権利条約』と同じイラスト(2色刷り)を見ながら、子どもたちが自分の権利について自由に想像し、言葉にして書き込み、それをもとに話し合うことで、「子どもの権利条約」への理解を深める手助けとなるワークブック。
◇購入はコチラ⇒



絵本『はじめまして、子どもの権利条約』
監修:川名はつ子 イラスト:チャーリー・ノーマン
定価(本体1,500円+税)

子どもの基本的人権を国際的に保障することを目的に、1989年に国際連合で採択された「子どもの権利条約」全54条の中から17の条文を抜粋。その内容を、スウェーデンの画家、チャーリー・ノーマンが描いたシンプルで力強いイラスト17点とともにオールカラーでわかりやすく紹介。
◇購入はコチラ⇒



※絵本とワークブックをセットで利用されることをおすすめします。

「知ろう!読もう!生かそう!国連子どもの権利条約ブックリスト」


 子どもの権利条約の関連書籍や雑誌をまとめたブックリストを、19の出版社による「生かそう!子どもの権利条約出版社(有志)の会」が制作しました。「かもめの本棚」もこの取り組みに参加しています。無料でダウンロードできますので、ぜひ活用してください。

◆ダウンロードはコチラから⇒

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【かわな・はつこ】
早稲田大学里親研究会代表。一般社団法人ピノッキオ代表理事。早稲田大学人間科学学術院元教授。お茶の水女子大学文教育学部卒業。博士(医学)帝京大学。社会福祉士。太平出版社編集部、帝京大学医学部助手、帝京平成短期大学福祉学科講師を経て、2003年4月から2019年3月まで早稲田大学。専門は子ども家庭福祉(養子里親制度・障害児)。
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