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TOKYO偉人さんぽ
イラストレーター(文と貼り絵)
きりたにかほり
第5回 松尾芭蕉

長い生け垣を前に、
地図をまわし始めた10月の午後。
いずこからか銀杏のねっとりとした香りが漂ってきます。

うーん。

今回の偉人、松尾芭蕉は三重県出身の俳人。
彼にちなんだ地として、深川周辺をめぐるべく、
まずは清澄白河駅へと降り立ちました。


芭蕉は先月の伊能忠敬と同じく、
たくさん歩いた人でもあります。

東日本をめぐった紀行文で有名な「おくのほそ道」にあたっては、
約2,400kmの旅をしたそうです。
当時必須だった通行手形や、旅の資金のこと
なにより、45歳を過ぎて1日50kmという、
ものすごい距離を歩いていたことを鑑みれば、
「芭蕉は忍者だった」という見解がうまれるのもうなずけます。
そもそも出身は伊賀なわけですし。

うーん。



「やっぱりそうだ!」

一歩も動かず、それらしい表情をしてうなっているところに
瞳の大きな女性が飛び込んできました。
となりでいっしょに首を傾げていた編集さんが、わあ!と感嘆の声。

「か、かもめの本棚の『AQ』でイラストを描いてくださっている、イ、井上由香さんです!」

思わぬ地で再会したふたりの姿は
驚き方の見本のようでした。

ふふふ。

カフェに向かう彼女と別れ、
まだ少しはしゃいだ気分で、
まずは生け垣の右側、臨川寺へ。
ここには芭蕉が禅を学びに通ったそうで、
それを記したとおぼしき碑もありましたが

「なんて書いてあるのか…よく読めませんね」

百代分の過客が月日を削ってしまったようです。


近くにいくつか像があるようですね、と
地図をひねって、清澄庭園の入り口へ。

受付の方にうかがってみたところ、
園内の情報に加え、
周辺の芭蕉スポットをいくつか教えてくださいました。
ご親切、感謝です。


おすすめを元に
駅の方へ戻って海辺橋へ。

大通りには白っぽいカフェやギャラリー。
最近の、新しくてかわいいお店もうれしいけれど……と、
きょろきょろしていましたが、
橋へ近づくにつれ、時代を感じる建物も。

そうそう、コレコレ、と、にやにやしていると
ランドセルが3つ、
かたかた言いながら橋の上を駆け抜けていきました。

あれ、もう夕方かしら。



顔を上げると車道を挟んだ向こう側、
椅子に腰掛ける青銅色の像が見えます。

近づくと、そこにいたのは旅姿の芭蕉。
旧居跡「採荼庵跡」とする石碑もそばにありましたが
碑文はくすんでいて、またしても良く読めません。
しかしそれすら味わい深く感じられてしまいます。

やっぱり芭蕉ですね。



川沿いに立看板となって並ぶ句を数えながら、
もうひとつの旧居跡、芭蕉稲荷神社をめざします。

「あ、カエル!」

歩道のタイルには、カエルの絵。
芭蕉の没後一度失われた旧居跡でしたが、
後年、彼の愛した石のカエルがみつかったことから、
この地を稲荷神社として保護したのだそうです。
やっと読めました、説明。

「神社ってこうやってつくることもあるんですねー」

いくつかあって、どれもありがたい気がした石のカエルに挨拶をして、
近くの高台へ。

十数段の急な階段をのぼり終えると、
空がぽっかりあいて、あふれるような夕日が待っていました。
そして悠然と流れる隅田川。

この光景の美しさにあっけにとられ、しばらくぼんやり。

敷地内には、またひとつ芭蕉の像もありました。
この場所は芭蕉庵史跡展望園というそうです。

茜色の空、輝くススキ、風に散る萩の花、
小池のなかの金魚と、広い隅田川。

俳聖のそばで秋の野に出会えた幸せを
どうして貼り絵にしたものかしら。


続きはカフェでゆっくり考えることにします。

※きりたにさんのホームページ「たいようのみやこ」
http://taiyonomiyako.com/index.html
※きりたにさんの連載エッセイ「TOKYO銀座めぐり」
http://www.tokaiedu.co.jp/kamome/contents_i201.html
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【きりたに・かほり】
1984年秋田県生まれの香川県育ち。熊本県立大学卒業後に上京し、都内制作会社にデザイナーとして勤務。現在は「世界をあたためたい」と絵を描き、関東を中心にイラストの制作や似顔絵屋さんなど行っている。
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