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美しいくらし
記念対談:ニースっ子が語る南仏の素顔 マイ コートダジュール ツアーズ社長×落語パフォーマー
ルモアンヌ・ステファニー×シリル・コピーニ
最終回 ニース人の豊かな時間の過ごし方
 ゆったりとした時が流れる南仏の暮らし。新刊『ニースっ子の南仏だより12カ月』の著者ルモアンヌ・ステファニーさんと、同じくニース出身のシリル・コピーニさんの特別対談。最終回は、フランス人の「ヴァカンス観」から南仏の心豊かな暮らしのヒントを探ります。

――これまでのお話で、フランス人と日本人の休日や休暇の過ごし方には違いがあるように感じました。

ステファニー フランスでは、正社員や契約社員は1年間働いたら5週間の有給休暇がもらえて、それを使うことは義務とされています。ただ、給料はそれほど高いわけではないので、いかにお金をかけずに休みを楽しむかが大切です。夏休み中は両親や祖父母から譲り受けた別荘に滞在し、日曜大工をしたり野外で遊んだりして、残りの1週間くらいはどこかへ旅行に行く、といった過ごし方をする人が多いですね。もう一つ、フランスが日本と違うのは「休むときは休む」ということ。フランスでは休日に会社側が社員にメールや電話をすることは禁止です。

シリル 子どものころを思い返すと、父親はまさにそうしていましたね。ヴァカンスの間は1カ月ほど山の中の別荘で過ごすのが恒例でしたが、その間父親は一切仕事の話はしないし、別荘にいることさえ会社の人に知らせていなかったと思います。日本には「休日でも仕事に気を配っていないと、周囲からよくない目で見られるのでは」というプレッシャーがあるように感じます。定時になっても上司がまだ仕事をしているから帰れない……といった話もありますよね。そういった感覚はフランス人には全くありません。

(写真:ルモアンヌ・ステファニー)

ステファニー 日本の人は仕事に限らず、人の目を気にしすぎている印象を受けます。ファッションでも結婚でも子育てでも、もっと自由に好きなようにしていいのに、と思ったりもします。とはいえ、日本でも仕事に対する意識が最近少しずつ変わり始めているようですね。残業をせず早く家に帰る人や、子どもの面倒を見る父親が増えてきているというニュースを聞くことがありますが、家族にとってはいいことだと思います。長い時間を一緒に過ごすと、家族の絆がすごく強くなります。ヴァカンスだからと言って、特別なことをする必要はありません。ゆっくりと時間の流れを味わうのは、とても大事なことです。

――お二人から教えてもらったヴァカンス感を、忙しい日本人の私たちもぜひ参考にしたいところです。

(写真:ルモアンヌ・ステファニー)

ステファニー 南仏の旅を計画中のお客さまにご要望をお聞きすると、見たいところや行きたい場所がたくさんあって、どうしても忙しいスケジュールになりがちなのです。でも可能であれば、時には海をぼーっと眺めたり、マルシェをのんびり散策したり、南仏ならではの生活を楽しんでもらえるツアーをご提案したいと思っています。と言いつつ、私も今回の日本滞在中はいろんな予定を入れて、あちこち飛び回っていたのですが(笑)。

シリル たくさんの場所を見るのもそれはそれで楽しいけれど、ちょっとのんびりする時間があればすごくリフレッシュできるよね。それも南仏の魅力の一つ。海も山も近くて、美しい自然がすぐそばにあって、それを楽しめる気候のよさもある。ぜひニース人のライフスタイルそのものを味わってほしいですね。

ステファニー 初めての滞在では定番のおすすめスポットは見ておきたいでしょうし、私もご案内したいと思っています。ですから、何度も何度も南仏を訪れてもらえたらうれしいですね。リピーターの方は、アパートを借りて、朝マルシェに行ってパンを買ってきて、自分で朝食を作って……と、地元に溶け込む生活を楽しんでいますよ。

――飾らない、ありのままの南仏の暮らしは、国籍を問わず人間にとって大切なことを思い出させてくれる気がします。日本とフランスの文化に精通するお二人は、両国の架け橋として今後どんなことをしていきたいと考えていますか?

シリル 20年以上を日本で暮らす中で、長くフランス文化を日本に伝える仕事をしてきましたが、10年ほど前に漫画を翻訳する仕事を始めたときに「どうして自分は日本文化をフランスに紹介していないんだろう?」という思いが芽生えました。それ以来、日本の魅力を海外に発信するようになりました。落語も、日本を紹介するツールの一つです。

――落語は日本の伝統的な話芸の一つですが、海外の方には微妙なニュアンスが伝わりにくいのではないでしょうか?

(写真:Cyril Coppini)

シリル 落語の演目は実に多彩で、国を超えて共通する噺もたくさんあります。たとえば、『時そば』は蕎麦の屋台を舞台にした日本的な演目に見えますが、本質は“人をだます話”です。同じように怪談や幽霊も万国共通の存在。落語には、外国人でも共感を得られる部分が思いのほか多いのです。そうした共通項を通して、日本の文化を海外に届けていきたいと思っています。目標の一つは、落語が世界の共通言語になること。日本に興味がなくても、舞台芸術の一つとして落語を楽しむお客さまが増えたらうれしいですね。

ステファニー 私は今回出版した『ニースっ子の南仏だより12カ月』が、南仏観光だけでなく、日常生活を考えるきっかけにもなってくれたらいいなと思っています。仕事やお金以外にも大切なことはたくさんありますよね。日本の皆さんは忙しい方が多いので、ゆったりした時間や家族と過ごす時間を作って、ひと呼吸置いてほしい。旅行に行くときにも、買い物だけではなくて、人とコミュニケーションを取ったり、ゆっくり滞在してその土地の風土を堪能したりすることで、これまでとは違った旅の楽しみに出会えるのではないでしょうか。

シリル コロナ禍を通してライフスタイルにさまざまな変化があったように、観光の仕方も変わっていきそうですよね。そのときにこの本が参考になるように思います。

3年ぶりに来日し、東京と大阪で出版記念パーティーを開催。多くのファンに囲まれて本の刊行を祝った

ステファニー コロナ禍では、毎週のインスタライブを通じてフォロワーの皆さんとコミュニケーションを取っていたので、日本で開催した出版記念パーティーで顔を合わせてお話しができて本当にうれしかったです。中には、「コロナ禍でふさぎ込んでいたときに、ステファニーさんのインスタライブで元気をもらえました。ありがとう」と涙ながらに伝えてくれた方もいて、私も感激して泣いてしまいました。皆さんと出会ったことで、日本にもう一つの家族ができたように感じています。そして、これからも南仏コート・ダジュールの魅力を発信することで、大好きな日本とフランスを結ぶお手伝いを続けていきたいと、あらためて気を引き締めているところです。

シリル ステファニーは、今までとは違ったフランスの姿を日本の皆さんに伝えていくために重要な人。この本がより多くの人に届いて、たくさんの人が南仏を訪れて、その暮らしに触れてくれることを、同じニースっ子の僕も願っています。(おわり)

「南仏の魅力が詰まった本です。ぜひ読んでくださいね!」

――ニースっ子同士の特別対談、いかがでしたでしょうか。故郷の暮らしを通して、私たちの日常生活にもたくさんのヒントをくれたお二人。対談中には「今度インスタライブを一緒にやろう」と盛り上がるひと幕もありました。今後のコラボレーションも期待しつつ、忙しい毎日の中でひと息つきたくなったときには『ニースっ子の南仏だより12カ月』のページをめくり、南仏の優しい風を感じてください。

(構成:寺崎靖子)

【シリル・コピーニさんの公式サイト】https://cyco-o.com/
【マイ コートダジュール ツアーズ】http://www.mycotedazurtours.com/
【mycotedazurtours Instagram】https://www.instagram.com/mycotedazurtours

『ニースっ子の南仏だより12カ月』

2023年2月23日発売


定価2200円(税込)

地元っ子ならではの視点で案内する
南フランス12カ月の暮らしと街歩きの楽しみ方

生まれ育ったニースを拠点に、日本人向け貸し切りチャーターサービスの専門会社を営む著者が、流暢な日本語を生かして綴る南フランスの日々の暮らしと街歩きの楽しみ方。1年12カ月、合計60のエピソードを収録。興味のある月やテーマを選んで気軽に読めるので、日々のちょっとした空き時間を使って太陽の光あふれる南仏コート・ダジュールを旅した気持ちになれる一冊です。4世代に伝わる家庭料理の簡単レシピも収録。

新刊発売記念

お得な「春の南仏フェア」

※キャンペーンは2023年5月31日(水)までです

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【Stephanie Lemoine(ルモアンヌ・ステファニー)】
1979年フランス・ニース生まれ。南仏コート・ダジュールを拠点に日本人向けオーダーメイドのプライベート貸し切りチャーターサービスを専門に行う「マイ コート ダジュール」代表。フランス政府公認ガイド。高校で第3外国語として日本語を選択、大学はパリにある国立東洋言語文化学院(Institut national des langues et civilisations orientales)で日本語と日本文学を専攻。大学時代の1年半、東京学芸大学に留学。日本語能力検定1 級の語学力を生かして、南仏の観光情報やライフスタイルをテーマにした執筆や翻訳、テレビや雑誌のコーディネート、母クリスティーヌがセレクトした南仏のブロカントのオンライン販売なども手がけている。夢は大好きな鎌倉で老後を過ごすこと。2人の息子たちには毎日欠かさず日本の話をしている。

【シリル・コピーニ(尻流複写二)】
1973年フランス・ニース生まれ。落語パフォーマー、翻訳家。日本在住26年。フランス国立東洋言語文化学院(INALCO)で言語学・日本近代文学の修士号を取得。1995 年から1996 年まで長野県松本市信州大学人文学部へ留学。1997年から2021年まで在日フランス大使館付属文化センター「アンスティチュ・フランセ」に勤務。2011 年から「フランス人落語パフォーマー」としての活動を開始、国内外問わず落語の実演、講演会、ワークショップを積極的に行う。テレビやラジオにも数多く出演。2013年からは漫画やビデオゲームなどの日本のサブカルチャーコンテンツの翻訳と海外への紹介にも取り組んでいる(『名探偵コナン 』『どうらく息子』など)。
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