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TOKYO偉人さんぽ
イラストレーター(文と貼り絵)
きりたにかほり
第7回 牧野富太郎

小春日和に訪れた大泉学園駅。
駅前の広場は、ふかふかとあたたかな黄金色。
タイルの道に敷き詰められた落ち葉たちが
この先へ導いてくれているようです。

今回はここから徒歩5分、牧野記念庭園を目指します。

南口からまっすぐ歩いて、角をひとつ右に曲がったら、
立派な庭が出迎えてくれました。

「ここかしら?」

少し身を屈めて門をくぐり、
顔をあげた瞬間、空は茜色に。

3メートルはあろうかという大木たちが、
諸手を挙げて紅葉しています。

その美しい光景に、しばし呆然。

気づけば、カメラをかまえ、眼鏡をずらし、
思い思いにその感動をとどめようとする
多くのみなさんと時を共にしていました。


園内奥の建物では写真展が開催中の様子。
何気なく立ち寄って、ふたたび呆然。
そこにあったのは、植物が躍動する瞬間。
植物生態写真家、埴沙萠による展でした。
ああ、なんて美しい。

隣の部屋では牧野富太郎による植物画の原本等も展示してありました。
小学校を中退し、山野を歩いて独学で植物学を修めた富太郎。
本の出版に際しては、印刷所に出向き、印刷の勉強をした上で
緻密な植物画を描いたそうです。
ああ、なんて楽しい。

沙萠は若い頃、富太郎に出会い、尊敬の念を深めたそうですが、
ふたつの展はどちらからもそこはかとない根気と
強い熱意が伝わってきました。


もう一度、外へ出て園内を見渡し、植物の名前を再確認。
300種近い庭園内の植物にはひとつひとつ名札がついていたのですが…

「どの名前がぐっと来ました?」

「『きつねのかみそり!』」

声をそろえて、わくわくしました。
あれは一体、どんな花が咲くのでしょう。


思い出を宝物に、黄金色の駅前へ向かう途中、
「炭火焼」の文字に惹かれてお店に立ち寄ってみると
そこはせんべい屋さんでした。

ぶつぶつとなにごとかをつぶやく店主の背中で
パック入りのせんべいを品定め。

緑色のおせんべいを携え、意を決して、質問。

「こ、これは何味でしょう?」

「それはねー、抹茶。甘いの」

わさび味への淡い期待を秘めた質問はもろくも崩れ去りました。

「ごはんに合う味なんだけどねー今の時代、しょっぱいのは少なくなってるのよねー」

「なんてこと。では、おすすめは……」

「うちはねー丸いのから始まってるから、基本的には丸いのだよね」

それでは、と手にしていた四角いとろろ昆布せんべいも次点となり、
丸い顔の店主のおすすめに従い、大入りのパックを選ぶに至りました。


駅の反対、北口側へ。
商売上手なせんべい屋さんに教わった通り、
陸橋から見渡すと南口よりにぎやかな印象の街並です。

「神社があるみたい! 行ってみましょう!」

交差点からのびる長い参道の脇には、大きな木。
彼の胸には「ムクロジ」と名札がありました。
石が多くて、よい神社。境内からは小学校の校庭も見えます。

「あらっ、ツワブキ」

足下の花を見て、編集さん。
さきほど記念庭園で出会った黄色い小花に再会できました。

植物たちに見送られて、今年の短い旅を振り返り、
商店街の静かな喫茶店でほっと一息。


おしゃべりに興じてすっかり暗くなった駅で
今度は大泉学園ならではのキャラクターたちに見送られ、
この地を後にしました。


さて、貼り絵も
動き出すように描ければいいな。





※きりたにさんのホームページ「たいようのみやこ」
http://taiyonomiyako.com/index.html
※きりたにさんの連載エッセイ「TOKYO銀座めぐり」
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【きりたに・かほり】
1984年秋田県生まれの香川県育ち。熊本県立大学卒業後に上京し、都内制作会社にデザイナーとして勤務。現在は「世界をあたためたい」と絵を描き、関東を中心にイラストの制作や似顔絵屋さんなど行っている。
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