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TOKYO偉人さんぽ
イラストレーター(文と貼り絵)
きりたにかほり
第6回 吉田松陰

東京都世田谷区に「松陰神社」なる地があると知り、
木枯らし吹くころ、ゆっくり散歩に出かけました。


新宿から私鉄を乗り継ぎ、まずは松陰神社前駅を目指します。


乗り換え駅、下高井戸に着くと、
わずか2両の青い電車がわたしたちを待っていました。

「か、かわいい!」

短い車両と鈍く丸いフォルムに旅情を感じ、
おもわず先頭車両へ一目散。

鉄道趣味でもないはずなのに
鼻息でガラスが曇ります。

小さな商店や、狭い緑の間を抜けて進む電車。
車窓を流れる景色もなんだかのどかに見えてきました。


この乗り物、たのしい。


電車を降りてすぐ、気になる胸像を発見。

どなたかしら?と、首を傾げていると、
編集さんが解説してくださいました。

「龍馬だ、こっちは高杉晋作ですね」

どうやら、そこに掲げられているのは幕末の志士たち。
おかげで、吉田松陰は先生だったのだと思い出しました。


1830年、山口県に生まれた吉田松陰は、
松下村塾を継いで幕末の志士を導くなどした人。

長い間、投獄されていたため、
じっとしていたイメージがありましたが、
10代で九州を遊学したり、東北を視察したり、
外国に強い興味を抱いて捕まってしまったり、
旅人気質もあったよう。

30歳の若さで刑死した彼の言葉をたどると、
旅を想起させるものもいくつかありました。


「干し柿だ!」

松陰神社通りをまっすぐ北側へ。

店先でモビールのごとく風に揺れる干し柿に感動して
写真を撮らせてもらうことに。

「どうぞどうぞ。このごろは、みんな珍しがって撮っていくのよ。」

魚屋のおばさんは店の奥でエレガントに微笑みます。



看板広告に心惹かれて、
次は酒屋さんの扉を開けました。

「あの、吉田松陰ビールはどれでしょう?」

「手前のそれ、坂本龍馬もあるでしょう。
前は何種類かあって、味も違ったんだけど、今は中身が一緒なの。」

風流と哀愁が垣間見えましたが、
もちろん松陰のラベルを購入して父への土産としました。


そこから先も、
ただまっすぐ歩いてたどり着いた大きな鳥居。

広い神社の境内を一巡したあと
記念のつもりで選んだおみくじは、中吉。

「人生草露の如し、辛艱何ぞ慮るるに足らん」

松陰先生の言葉が引用してありました。

近頃臆病なわたしに、
「さっさとやれ」と言われているようで、胸が痛いです。


さて、干し柿の宿る魚屋さんへもう一度。
今度はシャキッとしたおじさんが出迎えてくれました。

どれもおいしそうなお惣菜を前にして迷っていると
「満願寺とうがらしの炒めものがいいよ、珍しいからね」と
上手な一声。


重さを増した買い物袋で駅まで戻り、
松陰神社通り、まだ見ぬ線路の向こう側へ。


駅前のパン屋さんは夕暮れ時の混雑タイム。
レーズンパンと、お饅頭をあわてて買って、
もう少し先を歩きます。

またしても混み合うおでん屋さんの前には、
アンニュイな本屋さん。

店内に入ってはじめて、
美しく大事そうにディスプレイされているのが
古い本だと気づき、うれしくなりました。


やはりにぎわう八百屋さんの狭間で、
日暮れからの開店を静かに待つ、かわいい居酒屋さん。

道向かいのモダンなおせんべい屋さんには、
喫茶スペースもあるようです。


キラキラしたパーティグッズのお店で
クリスマスぽいオブジェを選んだら
商店街はもうすぐおしまい。

取材後は、古さと新しさが溶け合う
色よい街を名残惜しんで、
通り沿いのカフェへ。

窓際の席で外を眺めながら
洋梨のタルトとチャイをいただきました。


貼り絵は、あたたかくなるといいな。




※きりたにさんのホームページ「たいようのみやこ」
http://taiyonomiyako.com/index.html
※きりたにさんの連載エッセイ「TOKYO銀座めぐり」
http://www.tokaiedu.co.jp/kamome/contents_i201.html
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【きりたに・かほり】
1984年秋田県生まれの香川県育ち。熊本県立大学卒業後に上京し、都内制作会社にデザイナーとして勤務。現在は「世界をあたためたい」と絵を描き、関東を中心にイラストの制作や似顔絵屋さんなど行っている。
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