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TOKYO偉人さんぽ
イラストレーター(文と貼り絵)
きりたにかほり
第2回 樋口一葉

七夕のころ、小説家、樋口一葉の暮らした街を歩きました。


苔むす石垣、鐙坂。
その脇道に沿って敷くように並ぶ低い木造家屋。

静かに続く家々の真ん中に
ぽつんとひとつ、緑色のポンプ。

肺結核により24歳の若さでこの世を去った一葉。
転居の多かった彼女は18歳の当時、
この井戸ポンプを挟んだ左右の家で家族と暮らしたそうです。

石造りの幅広い階段をのぼって、菊坂通りへ。
一葉の通った質屋、旧伊勢質屋の白い壁の脇で作戦会議。
生け垣の奥で、しびれた紫陽花がうつむいています。


「駅の近くまで戻れば、お菓子、売ってませんかね。」

貼り絵の材料となる包装紙をもとめて
一路、本郷三丁目駅の方へ引き返すことにしました。

豆腐売りの笛が近づいてきます。


今回の取材は、まずはじめに東大へ。
本郷と言えば、東京大学なのだそうです。
あらためて眺めれば、古そうな建物とガラス張りの施設、
そして、遥か先まで続く木立。
目に映るはどれも立派で、培われた時間を感じました。

赤門の前、立派な松の写真を撮って構内案内図をチェック。
3駅に囲まれた広い案内図のなかでは、
なかなか自分をみつけられませんでした。


東大を出て、「赤門」の名を冠したいくつもの建物を見過ごし、
途中で見つけたカサカサの笹にピンクの短冊を託しました。

この街ならでは、洋書ばかりの本屋さん、
ずらりとそろった顕微鏡、賢そうな写真館にドキドキ。

日本各地から300種類以上がそろうという手ぬぐい屋さんでは
持ち合わせが足りず、5,000円の鯛柄バッグを泣く泣く見送り。

額屋さんでは「坂が多いから気をつけてね」と
エールをもらい、似顔絵の多い地図を購入。
この地図は、散歩にあたって、いざ広げてみると
著名な顔が多すぎて、そこがどこだかわからないという名品でした。


そうして編集さんと3人、2時間近くそぞろ歩いたあと、
今日はこれまで全然、樋口一葉にちなんでいないことに気づいて
ようやく旧居跡を訪れたのでした。



さて、日陰を選んで歩き、
大通りに戻ると、和菓子屋さんを発見。

さんざん迷った挙げ句、竹筒に入った羊羹を買いました。

「7月7日までの限定品ですよ、召し上がり方の紙、入れておきますネ」

チャーミングなご婦人が入れてくださった説明書によると、
竹筒の羊羹は節に穴をあけ、底を軽くたたいて中を取り出すそうです。
その一手間でおやつの時間がたのしくなりそうです。


たくさん歩いたので、となりのケーキ屋さんで少し休憩。
今日と明日のことを話しながら、
あんずのタルトをごちそうになりました。
コンソメスープがおいしかったです。

帰り際、もうひとつお土産に、と、あんぱんを購入。
ケシの実たっぷり、ずっしりと重たいパン。
朝が来るのが楽しみです。


日もかげり、交差点を渡って、
茜色に染まるかねやすビルの前でお別れ。


なんだか甘い貼り絵になりそうです。


〈次回は岡本太郎ゆかりの地、青山周辺を歩きます〉

※きりたにさんのホームページ「たいようのみやこ」
http://taiyonomiyako.com/index.html
※きりたにさんの連載エッセイ「TOKYO銀座めぐり」
http://www.tokaiedu.co.jp/kamome/contents_i201.html
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【きりたに・かほり】
1984年秋田県生まれの香川県育ち。熊本県立大学卒業後に上京し、都内制作会社にデザイナーとして勤務。現在は「世界をあたためたい」と絵を描き、関東を中心にイラストの制作や似顔絵屋さんなど行っている。
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